大判例

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東京地方裁判所 昭和25年(ワ)37号 判決

原告 三枝要

被告 三井精機工業株式会社

一、主  文

被告は原告に対し金百二十万円及びこれに対する昭和二十四年四月二十八日から右支拂の済むまで年六分の割合による金員を支拂うべし。

訴訟費用は被告の負担とする。

この判決は仮に執行することができる。

二、事  実

原告訴訟代理人は主文第一、二項と同趣旨の判決並に仮執行の宣言を求め、その請求の原因として、被告は昭和二十四年四月十四日金額百二十万円、満期同年同月二十八日、支拂地、振出地共に東京都中央区、支拂場所株式会社協和銀行日本橋支店なる約束手形一通を訴外岩崎彰良に宛てて振り出し、同訴外人は即日これを原告に裏書讓渡した。しかして、原告はその所持人として同年同月三十日右手形を手形交換所に呈示してその支拂を求めたが拒絶せられたので、こゝに、被告に対し右手形金とこれに対する満期である同年同月二十八日からその支拂の済むまで手形法所定の年六分の割合による法定利息の支拂を求めるため本訴に及んだ次第であると述べ、被告の主張事実に対し、本件手形がその主張のような書換手形であることは認めるが、その他は否認すると述べた。<立証省略>

被告訴訟代理人は原告の請求を棄却するとの判決を求め、答弁として、原告の主張事実は全部認めるが、原告は本件手形の悪意の取得者であるから、被告には右手形金の支拂義務はないすなわち、被告は訴外岩崎彰良を通じ二百万円の融資を受ける目的で昭和二十四年一月十七、八日の両日に亘り約束手形五通金額合計二百二十二万円を振出しこれを岩崎に交付し、岩崎は右各約束手形を原告に讓渡し融資を受けたが、その内九十万円を被告に交付しただけでその他を自己の用途に流用費消したので、被告は同年二月一日頃岩崎との間に被告振出の前記約束手形の内百二十二万円の分については被告はその支拂の責に任ぜず岩崎において全責任を負う旨を約束し、且つ、同月十日頃原告に対し右の経緯を詳細に説明し、右手形金についてはその支拂の意思も責任もないことを告知した。しかして本件約束手形は前記被告振出の五通の約束手形の内右百二十二万円の約束手形をその満期毎に書き換えた最後の手形であり、原告は被告を害することを知つてこれを取得したものであるから、被告には本件手形金支拂の義務はないのであると述べた。<立証省略>

三、理  由

原告主張の請求原因事実は総て当事者間に爭がない。

よつて被告の抗弁について按ずるに、わが国における手形の書換は通常旧手形上の債務の支拂を延期するために行われるものであるが、この場合においては新旧両手形はその同一性を失わないものと解するを相当とするから、原始手形(書換前の最初の手形)の善意取得者は、たとえ、その取得後に原始手形に附着する人的抗弁事由たる事実を告知され手形の書換を受けたからといつて、書換による新手形について突如として悪意の手形取得者に変じ、その抗弁事由の対抗を受けるものではなく、却つて、新手形についても原始手形におけると同様にその善意取得者としての地位を保有するものといわなければならない。これを要するに、原告はその原始手形を取得した後に原告の前者である岩崎彰良に対する人的抗弁事由を知つてその書換手形である本件手形を取得したものであるから、原告は右手形上の権利を取得しないというに帰着する被告の抗弁の如きはそれ自体何等理由のないものと認めるの外はない。

果してしからば、被告は原告に対し本件手形金とこれに対する満期の昭和二十四年四月二十八日からその支拂の済むまで手形法所定の年六分の割合による法定利息の支拂義務を負つていることが明瞭であるから、被告に対し右義務の履行を求める原告の本訴請求を正当として認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九條、仮執行の宣言につき同法第百九十六條の各規定をそれぞれ適用して主文の通り判決する。

(裁判官 田中盈)

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